大覚寺の観光スポットに大沢池というのがあります。広大で美しい池で、境内にある観月台がビューポイントなんですが、実はこの池のほとりには近づくことができるんです。
大沢池周囲は大覚寺境内と同様に時代劇の撮影で使われることがある場所なので、ぜひ近くで見てみたいですね。また、桜が多く、花見と月の名所にもなっています。
由緒も古く、大沢池は平安時代に嵯峨天皇が大覚寺の前身となる離宮嵯峨院造営にあたって作られた日本最古の林泉です。
林泉(りんせん)とは、林や泉のある庭園のことです。
造園当初は、池泉舟遊式庭園であり、池中には天神島と菊が島,池に入れらている石である庭湖石があります。
大沢池は唐の洞庭湖を模して造られており、そのことから庭湖とも呼ばれています。
●どこから入るの?
大覚寺玄関門の手前の道を大覚寺へは入らずそのまま南に行ったところに大沢池への入口があります。
入口には集金箱が入っており、協力金200円を求める案内がありますが、従業員はおらず無人であり、お金を払う人は少ないものと思います。
大沢池を歩いてる人を見ても観光客ではなく散歩中らしい地元の住民のような感じが多かったです。
●茶室・望雲亭
大沢池畔に入ってすぐのところにある茶室。普段は入れません。
名前の由来は嵯峨天皇と空海が大沢池に船を浮かべ茶を酌み交わしていた時に天皇が呼んだ漢詩に由来するようです。
●五社明神
空海が嵯峨離宮の鎮守として建てたとされる社。
祀られているのは伊勢内宮,伊勢外宮,八幡宮,春日宮,住吉宮の神様です。
●心経宝塔
昭和42年に嵯峨天皇心経写経1150年記念で建てられた多宝塔。
大覚寺の紹介でよく出てくるように思えますが、実は大覚寺の伽藍の方にはなく大沢池の方にあります。
●石仏
大沢池畔にある石仏群。平安時代のものや鎌倉時代のものなど古いものであるようです。壊れているものも数体見られます。
●天神島
大沢池の池中には天神島,菊が島という二つの島があり、これに庭湖石を入れて二島一石として華道「嵯峨御流」の基本にもなっているそうです。
このうち最大の大きさである天神島には橋がかかっており渡ることもできます。天神島の名前通り、菅原道真を祀る祠があるのですが、道真は大覚寺創建に功績のあった人物であるそうです。出家せずに大覚寺の別当にまでなっていたとか。
大覚寺のホームページに書かれていたのですが、この島には未発見の大覚寺初代門跡である恒寂入道親王とその母である淳和天皇皇后正子の墓がある可能性があるようです。
というのは、恒寂親王は藤原良房が起こした権力闘争(承和の変)に巻き込まれ皇太子の身分を剥奪,命の保証もないところで母が創建した大覚寺の門跡となることでかろうじて命をつないだという事実があります。
初代門跡は藤原氏に恨みを抱いて死んでいったことが考えられ、その怨念を鎮めるべく同じく怨霊となったとされている天神の祠で抑え込んだのではないかと大覚寺は考えているようです。
★天神の鳥居
天神の祠の鳥居です。人間が通る場所ではなく池の傍に立っており意味深ですね。
★嵯峨天皇の詩
天神島の先端まで行くと嵯峨天皇の漢詩が刻まれた岩が置かれています。この詩が望雲亭の名前のもとになったものです。
●菊が島・庭湖石
天神島から連なる島が菊が島で、その先に庭湖石が連なっています。菊が島には大覚寺第三代門跡「定昭」が埋葬されていると寺に伝わる古書にはあるようです。
菊が島は天神島を守護する島とされているのですが、このことからも天神島には初代門跡が眠っているのではないかと考えられているようです。
●名古曽の滝跡
名古曽の滝は平安時代に藤原公任によって「滝の音は たえて久しくなりぬれど、各社流れて、尚聞こえけれ」という詩で詠まれています。
この詩は百人一首にも選ばれているので知っている人もいると思いますが、ここで詠まれた滝跡が発掘され再現されてたものが、大沢池の北側にあります。
●梅林
大沢池北側にある梅林です。シーズンには美しい花を咲かせるのでしょう。